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【映画レビュー】『ベルリン、天使の詩』(1987年/西ドイツ)

どうも、英司です。

久しぶりに映画レビューでも書きたいと思います。先日、早稲田松竹にてリバイバル上映された不朽の名作「ベルリン、天使の詩」(1987年/西ドイツ)を見に行きました。この映画は学生時代からとても好きだったのですが、あいにくDVDでしか見たことがなかったので、今回初めて劇場で見られるチャンスが訪れて大変貴重な機会でした!

ひとまず、まだ見ていない方や、見る予定もない方にも楽しんでいただけるように心がけてレビューを書きますので、よろしければお付き合いください。


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※かなり個人的な解釈がふんだんに含まれておりますのでご注意ください※


この映画が劇場公開された1987年と言えば、まだベルリンの壁が存在していた時代。四方を壁で囲われたベルリンという街が持つその特殊性に注目した作品なのではないかと思いました。


(ご存知の方が多いかと思いますが、誤解されやすいため解説を…ベルリンの壁は、西ドイツと東ドイツのすべての国境線に建てられていた壁と思われている方もいらっしゃるようですが、そういうわけではありません。ベルリン市は西ドイツの領土でしたが、それは西ドイツの中にはなく、東ドイツの領土の中に「飛び地」として存在していました。東西ドイツの格差が次第に広がる中、目覚ましい経済発展を遂げる西ドイツへの亡命を希望する東ドイツ人が、このベルリン市に駆け込んで亡命を果たす例が後を絶たず、東ドイツ政府がそれを防ぐためにこのベルリン市を囲うように建てたのがいわゆる「ベルリンの壁」です)


思うに、私たち日本人も含め、この映画が制作された時代に生きていた先進国のほとんどの人々は、ご年配者以外にとって「第二次世界大戦」は直接的な記憶とは断絶された過去の歴史上の出来事であり、東西冷戦は進行中の出来事ではあったものの、それは自分の毎日の生活とは直接的に関係のない、エライ人たちが威勢を張り合っているどこか遠いところで起きている話、という感覚だったのではないでしょうか(私自身、その時期はまだ物心が着く前だったのであくまで予測ですが…)。

しかし、ベルリン市民にだけはこれが当てはまりません。
毎日働き、食事をし、遊び、休息するその街は壁で囲われた街であり、その壁は「戦争(=ナチス)」の記憶を陸続きのものにし、共産主義と資本主義という政治体制が世界を二分している現実を強烈に意識させ続けるものです。

敗戦国としての自虐性と、同じ国でありながら西側陣営と東側陣営の最前線として緊張関係にある宿命を背負わされたのが、壁に囲われた街に暮らすベルリン市民だったのではないでしょうか。

当時のベルリン市民にとって戦争(=ナチス)は過去の歴史上のものではないし、東西冷戦も遠いところで起きている話ではありません。自分たちの日々の生活に、これらの苦悩を思い出させる「壁」は常に存在しており、この「壁」が、当時のベルリン市民の心に深い影を落としていたのではないかということが予測できる演出が随所に見られます。

現に映画内で、人々の心の声を聞くことができるとされる天使たちが読み取る市民たちの声は、どれも大変詩的で美しいフレーズばかりでありながら、どれも感傷的で退廃的です。これらの声が聞こえる天使たちの目線で描かれる映像がすべてモノクロームに統一されていることも、この時代のベルリンに漂っていた陰鬱とした空気感をうまく演出していたのではないかと私は読み取りました。

そして、「戦争(=ナチス)」の悪夢を思い起こさせる演出も随所で見られます。

天使たちは、かつて戦争で瓦礫の山となっていた通りばかりを選んで歩き、そこに戦時中の実際の映像を折り入れながら物語が展開します。

また、ナチスがかつて戦時中に焚書をしていたことを想起させる映像と対比させるかのように、天使たちが集まる場所の設定として「図書館」が選ばれています。

実際の歴史では、この映画が公開された2年後の1989年に、ベルリンの壁は崩壊しました。映画が制作されていた当時、既に東側諸国は崩壊寸前であり、革命前夜の様相を呈していたものと思われます。

この時すでに、アメリカ映画界で成功を納めていたヴィム・ヴェンダース監督は、そんな祖国のたどった数奇な運命と、国や都市が背負った宿命が人々の心にどのような作用を生むかを、後の歴史に残しておく必要性に駆られたのではないかと私は勝手に予測しています(「図書館」の演出はここにも帰結していると私は解釈しています)。


私もこの映画を見たのはもう4回目?くらいでしたが、初めて見た時(大学生の頃)はただただ詩的で幻想的な世界観にうっとりしてそこまで深く考えて鑑賞しませんでした。
(実際、ストーリーとしては「人間には見えないある天使の男が、人間である舞姫に恋をし、自分で生き様を選択していく」というだけの、大変シンプルなものです)

しかし、かなり含みのある作品ですので、見るたびに新しい解釈が生まれたり、見る人によって注目すべきポイントが異なったりするところが面白い作品です。

特に、他のファンの方のレビューなどを見ていると大変興味深いです。

この映画には実は語られていない設定があり、ベルリンに住んでいる天使たちは、第二次世界大戦にあきれた神が人間を滅ぼそうとしたとき、天使たちが神に諫言したために逆鱗に触れ、罰としてベルリンに落とされた堕天使たちの話である、という説や、ニーチェが遺した有名な言葉「神は死んだ」の議論の延長線上にある映画である、という説など、本当に多種多様な解釈がなされている映画で、とても面白いです。

ちなみに、同じく含蓄があり、解釈を観客に委ねるタイプの作品を撮る監督さんの代表格としてよく名前があがるのがフランス人のジャン=リュック・ゴダール監督です。『ミニシアター好きと言えばゴダール』と言われるくらい著名なヨーロッパ映画界の巨匠であるため、学生時代に何度かチャレンジしましたが私の頭では難解過ぎて理解できないものが多かったです(しかも、それはたぶん今もなお私の頭では理解できない自信だけはあります・苦笑)。

これは完全に好みの問題ではありますが、完全にアートや哲学、思想に振り切って映画を作っている(と、勝手に私が解釈している)ゴダール監督の作品よりも、同じヨーロッパ生まれの巨匠でもヴィム・ヴェンダース監督の作品の方が、時事性に絡めたり、社会問題などからインスパイアされて作った作品などもあり、今回のように舞台となっている国や地域、時代背景を理解することでより楽しめる作品などもある点、私の好みには合っていたかな、と感じています。

個人的にヴィム・ヴェンダース監督の作品では、『ランド・オブ・プレンティ』(2004年/アメリカ)なんかも、ニューヨーク同時多発テロをテーマにしつつも、アメリカ合衆国の繁栄の影に隠れた貧困や、家族、外国人など、9.11直後のアメリカ社会に漂っていた空気感をうまく保存したロードムービーだったと解釈していますし、この作品も結構お気に入りです。


いやぁ、なんだか久々の映画レビューを書いたらものすごい熱が入ってしまいました(笑)。そんなわけで、皆さんも素敵な一作に出会えますことをお祈りしつつ。




■『ベルリン、天使の詩』予告編





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