日本の若者が「保守化」する理由

どうも、英司です。すっかり秋らしい気候の毎日になりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さて、世間では解散総選挙の話題で持ち切りです。そんな時期ですから、久々に政治ネタでも書こうと思いました。

※政治ネタと言っても、個人的な考察や主観がたくさん入るかと思いますので、その点はご了承願います。


■世界の若者と日本の若者の政治的傾向


かつてイギリス首相を勤めたウイストン・チャーチルはこんな言葉を遺しています。

"If you are not a liberal at 20, you have no heart. If you are not a conservative at 40, you have no brain."

和訳すると…

20歳の時に自由主義者(リベラル主義者)でなければ、情熱が足りない。
40歳の時に保守主義者でなければ、知性が足りない。

彼は保守党所属の右派の政治家であったため、イギリス人特有の嫌味っぽい皮肉を込めて敵陣営を批判する文脈でこうした発言が出たものと思われますが、これは、若く情熱や正義感に燃える者ほどリベラル主義に傾倒する傾向が背景にあるからこそ飛び出した発言であることは容易に予測できます。

チャーチルが生きていたのはもう半世紀以上前のことになりますので、主要国の現在のデータを見てみましょう。

まずはイギリス。

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こちらは今年2017年にイギリスで行われた総選挙の出口調査の結果です。イギリスの二大政党は保守派の保守党と、リベラル派の労働党です。この表では青色のConservativeが保守党、赤色のLabourが労働党となります。

見ての通り若者ほど労働党へ投票した割合が高く、18歳~19歳の若者たちと、70歳以上の老人たちとではクッキリと逆の投票行動が確認できます。


もうひとつ、わかりやすい二大政党制を採用している国がアメリカです。こちらも見てみましょう。

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こちらは2016年のアメリカ大統領選挙の出口調査の結果です。こちらも、39歳までの世代はリベラル派政党である民主党候補だったクリントン氏への投票が目立ち、40歳以上になると保守政党である共和党の候補者で、現在の大統領であるトランプ氏への投票が逆転しています。

チャーチルが言うように、二大政党制を採用する欧米主要国では、若者ほどリベラルに、年配層ほど保守になるという傾向があるようです。

一方、日本はどうでしょうか。下の図を見てみましょう。

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(出典:NHK出口調査による)

こちらは2016年に行われた参議院選挙の、比例代表の投票先政党の年代別の内訳を示したデータです。

これまで見てきた2つの国とは違う傾向が読み取れます。

日本の場合、20代が保守政党である自民党に最も投票しており、それに18歳~19歳、30代が続いています。

逆に60代になると民進党も健闘し、共産党へ投票する人の割合も比較的多い傾向が見られます。恐らくこの世代の方々は学生運動華やかかりし頃に青春時代を過ごし、会社に入ってからも労働組合の活動が今よりも活発な時代に社会人生活の最盛期を過ごしていた方々であることも関係しているのでしょう。

しかしそれを差し引いても、他国とは違った傾向が見られるのは興味深い現象です。


■この10年間、世界で起きていたこと


若者が自民党や安倍政権を支持する理由について考える前に、ここ約10年間の日本や世界の経済情勢を振り返ってみたいと思います。

ここからはミレニアル世代ど真ん中であり、現在アラサー世代である私の個人的な体験や肌感覚も交えた考察となります。

私は1985年の早生まれであり、4年制大学を卒業しています。浪人・留年・留学等はしていませんので、2005年~2006年にかけて就職活動をし、2007年に社会人になりました。

私が就職活動をしていた時は団塊世代の大量離職がいずれ問題になるとは言われつつも、就職氷河期の最高潮と言われた2000年~2001年の余波も残っている時代で、大学入学当初から「就職活動は大変」と周囲の大人から脅されまくり、実際にサークルやゼミの先輩が苦しんでいる姿を1年生の頃からよく見ていました。

就活戦線を切り抜け無事社会人になり、やっと仕事にも慣れてきたと思った矢先、2008年の秋にリーマンショックが起きます。

この2008年暮れから2009年という時代は、次々と仕事がなくなり、取引先からは契約を切られるならまだ良い方で、倒産によって会社そのものが消失するなど日常茶飯事。倒産されると債権の回収もできず、自社の売上にも深刻なダメージを食らいます(これが世の中のあちこちで起きており、倒産の連鎖が起きていた)。

当時私は広告会社におり、広告業界は真っ先に不況のダメージを受けます。残業代もボーナスもカット、それまで当然のようにもらえていたインセンティブも全部なくなり、切り詰めた生活を余儀なくされました。

当時就職活動をしていた後輩たちも、さながら就職氷河期真っ只中の状況で、とても苦しんでいました。

リーマンショックによる世界のドルへの不審感から円が大量に買われ空前の円高に。製造業の輸出が強いとされている日本にとってこの円高のダメージは相当大きく、しかも当時発足した民主党政権は米軍普天間基地の辺野古移設問題で右往左往しており経済対策にまで手が回っていない状態。

民主党政権下では失業保険の期間延長や適応範囲の緩和、生活保護の受給が少ししやすくなるなど、何もしなかったわけではないですが、それらの政策はあくまで「セーフティネット」つまり「もしもの時の安心」的なものを手厚くした、ということであり、本質的にそれらのセーフティネットを利用しなくて済む世の中=好景気な世の中を目指したものではありませんでした。

それでもなんとか倒産の連鎖が一巡し、日本経済がようやく落ち着きを見せて来たかに見えた2011年には東日本大震災が発生します。

甚大な被害と犠牲者を出したこの震災の余波はあまりに大きく、自粛ムードの中でイベント会社を筆頭としたエンタテインメント系の企業の倒産の連鎖を皮切りに、一部の建設業を除いては再び不況に突入したのでした。

これらが、安倍政権が誕生するまでに私が体験した社会人生活です。


■若者が安倍政権や自民党を支持するのは自然な流れ


先に言っておきますが、私には支持政党はありません。自民党についても、投票するときもあれば、しないときもあり、安倍政権や自民党のファンというわけではありません。

しかしながら、これまで味わって来た時代の流れを考えると、日本が不況な状態しか知らなかった現在の20代や30代が安倍政権や自民党を支持するのは自然な流れに思えてきます。

先ほどは社会人生活の個人史観を書きましたが、もっと遡ってみると、物心がついたと同時にバブルが崩壊して以来、日本はずっと不況でした。

1990年代の大不況下において、阪神・淡路大震災が発生し、地下鉄サリン事件を始めとするオウム真理教の一連の犯行、1997年には山一證券が廃業し、それまで日本で信じられてきた「良い大学に入り、有名な企業に勤めればその後は何も心配することはない」という神話が崩壊し、国民には自立心が求められる時代が来ました。(ミレニアル世代の組織への帰属意識の低さ、フリーランス指向が高いのはこのためだと考えています)

つまり、私たちは「好景気」がどういうものか、まったく知らなかったのです。正直、「失われた20年」と言われてもいまいちピンと来ませんでした。

なぜなら、私たちにとって不景気である状態は至極普通のことであり、20年も続く不景気の中で強いリーダーシップを発揮した指導者と言えば小泉首相くらいなもので、この不景気を「政治」が解決できるわけがないと、誰もが考えていたのではないかと思います。

現在、一応日本は景気回復基調であり、好景気な状態ということになっています。いわゆるアベノミクス効果というやつですが、社会科学を少しでも勉強した人間ならば、国債を日銀に肩代わりさせただけのこんな政策によって作り出された好景気など、インチキとデタラメであることはすぐにわかります。

実際、賃金が飛躍的に上がったとか、桁違いのボーナスをもらったとか、そんな話は聞きません。

アベノミクスの危うさ、胡散臭さ、仕組み上の欠陥をよく理解した上で、それでも安倍政権や自民党を支持している若者が、非常に多くいると予測できます。

これは言わば、「空気」を支持しているのだと思います。「空気」とは、「好景気と言われる世の中に漂う空気」のことです。

不景気しか知らなかった世代の人間にとって、こうした「金銭的な実感はないけど、なんとなく世の中が明るい」というだけで、現政権を支持するのに充分な理由になりえるのだと思います。

そればかりか、もっと若い世代に至っては、実際に有効求人倍率の改善によって就活が順調に進み、直接的な恩恵を受けた人も多いでしょう。

アベノミクスには賛否がありますが、その賛否は抜きに、初めて政治が経済をコントロールしている状況を目の当たりにし、そこで受けた衝撃もまた、若者たちの現政権への支持に繋がっているのだと思います。


■別に若者は「保守化」していない


ここまで見てきた通り、一部の極端な例を除いては、若者世代は主に経済政策の「結果」のみを判断材料にして安倍政権や自民党を支持している向きが強いのではないかと思います。

よくネット界隈では、安倍首相は極右だとか、懐古主義だとか言われていますし、実際安倍首相も総理大臣就任前の一議員時代はそう取られかねない発言を度々しています。

しかし、その安倍首相や自民党を若者たちが支持しているからと言って、数値データだけを見て「若者は保守化している」と断定するのは、実態を見誤っているのではないかと考えます。

こちらに面白いデータがあります。

【憲法9条を改正すべきか】


・男性
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・女性
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(出典:NHK世論調査 日本人と憲法2017)

上の表はNHKが行った世論調査です。
日本においてリベラル派と保守派が最も激しく対立する争点が憲法9条改正の是非です。この調査結果によると、改正する必要がないと答えた人の割合が最も多かったのが18歳~29歳で、彼らの世代の中で「改正が必要」と考えている人は僅か2割しかいない結果になっています。

30代においても6割近くが改正する必要がないと考えており、18歳~30代は、40代~60代よりもリベラルな指向があることがわかります。

また、国を愛する気持ちの程度の調査も以下に掲載します。

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(出典:内閣府調査 2017年4月)

こちらも、昨今メディアでは「愛国女子」なんかがクローズアップされていますが、実際の統計データでは18歳~29歳と30歳~39歳に関しては、愛国心を持つ人は全体の平均以下、ということになります。

個別の政策や思想性に関して言えば、日本の若者は保守派が多いとは言い切れないのではないでしょうか。

つまり、安倍政権や自民党への支持率が高いからと言って、「若者の保守化」と言ってしまうと、少し実態を掴めなくなってしまうのではないかと思います。


■そもそも自民党は保守政党なのか?


日本の政治のわかりづらさの原因の主たるものが「自民党」という存在です。

一応、日本では長らく社会主義を掲げる日本社会党=革新主義の対を成す勢力であることから、自民党を保守主義としてきましたが、実際のところ、自民党が保守政党かと言われればそれも「?」です。

自民党の経済政策の基本路線は公共事業による都市と地方の格差是正です。この手法は田中角栄首相の時代に最盛を迎えましたが、現在の自民党も基本的にはこの方針です。

しかし、これは世界的に見ればイギリスの労働党やアメリカの民主党などと言った、完全にリベラル派政党の政策そのままです。

他国の保守政党を自称する政党はこんな政策はしないでしょう。競争原理に競り負けてしまった自治体なり企業なりに関しては基本的に「自己責任」であり、国家は個々の案件に関して極力介入すべきではない、という立場です。

日本の場合、むしろ民主党政権時に自民党が行って来た公共事業を事業仕分けによって次々と廃止させて行くなど、保守とリベラルが逆転した現象も見られました。

また、保守政党というのは基本的に国粋主義です。トランプ大統領風に言えば「America First」つまり、自国第一主義ということです。

この「国粋主義」に対を成す概念が「国際主義」です。この2つは、おおよそ国粋主義は保守と、国際主義はリベラルとセットになっています。

しかし、自民党はトランプ政権になる直前まで、TPPの批准に尽力していました。トランプ大統領が就任した初日にTPPを破棄したことからもわかるように、本来の保守的な国粋主義者であれば、TPPなど最も受け入れがたい政策のはずなのです。


■「コスパ重視」の若者たち


このように、一部の熱烈なファンは除き、安倍政権や自民党を支持している若者のほとんどは自身を「保守派」だとも思っておらず、ただ単に経済政策の「結果」だけを見て、自分がもっと若かった頃より今の方が良いから、という理由で政権の支持/不支持を決めているに過ぎず、これを右翼・左翼のイデオロギーに当て込むべきではありません。

むしろ「あなたは自民党支持者だね?じゃあこれには賛成だよね?これには反対だよね?」と、イデオロギーを軸にセット販売してくるようなやり方には、今の若者はもっとも嫌悪感を抱き、より政治離れを加速させることになると思います。

つまり、今の若い世代は、自分のことは自分で決めたいし、結果をもっとも出している(ように感じる)人なり政党なりに投票しているだけであり、もっと言えば「コスパが良いものを選んでいる」に過ぎません。

これを年配者が覚めているとかドライと言うのは簡単ですが、何度も言うように今の若者は不況下で育ち、好景気を知りませんでした。デフレと不況がセットになった時代に育った者の生活の知恵のひとつと言えるでしょう。


そんなわけで、今回のエントリのタイトルは日本の若者が「保守化」する理由でしたが、結論、日本の若者は別に保守化していない、ということでした。

タイトルと結論が矛盾してしまいすみません。今日はこのあたりで。それでは。



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