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被害者のドラマツルギー ―若いゲイの皆さんへ―

どうも、英司です。
若干遅れてしまいましたが、新年あけましておめでとうございます。
昨年もこちらのブログを読んでくださっていらした方も、初めましての方も、2014年もどうぞよろしくお願いいたします。

こちらは年末年始のお休みはカレンダーの並びも良くて9連休をいただいておりましたが、どこに行っても混んでるだろうということと、既にホテルや交通機関がいっぱいだったこともあり、年末年始は実家への日帰り帰省以外では特に遠出はせず、その代わり1月11日~13日の連休で大阪へ遊びに行っていました!

というのも、12日にNUDEという大きなゲイイベントがありまして。大阪の人たちのみならず、本当に日本全国からゲイのメンズたちが集結していて、連休の堂山(大阪のゲイタウン)は連日どこのお店に行ってもにぎわってて本当に楽しかったです。

また、今はTwitterやFACEBOOKなどの普及もあり、遠いところに住んでる人とも日常的に連絡を取ることができ、そういう人たちと一気に会うことができてすごく良い旅になりました!


■このエントリの最初に

僕は19歳の終わりにゲイの世界にデビューしました。当時は大学生だったこともあり、いわゆるゲイリブ理論にはまったり、実際そういう活動をしていたときが一定期間ありました。今はもう、ゲイリブに足を突っ込んでいた年数を、ノンポリゲイ生活を送る年数が遥かに上回り、そういった人たちとの繋がりも疎遠になり、自分としては完全に過去のことになりましたが、未だにあの時代の影に足を引っ張られることがあります(実際、昨年起きたあの事件を引き起こしたのも、大学ゲイリブ時代の知人の一人で、彼は現在もあるゲイリブ団体の主要構成員です)

ゲイリブ的な活動を否定する意図はありませんし、そういった活動も、一部では必要なことは重々に承知しています。しかしながら自身の経験上、そういった理論に飲みこまれ過ぎてしまうことで、せっかくの楽しい青春時代、普通の同性愛者の若者に認められた楽しい生活を送る権利まで自ら放棄してしまうようなことも一方で発生しているのかな、と思い、今回のエントリを書かせていただきました。

成人の日を少し過ぎてしまいましたが、ぜひ若い同性愛者の皆さんに読んでいただきたい内容ですので、よろしければお付き合いください。


■「被害者」を演じ続ける人生はつらい


ゲイリブ活動に限らず、冷静終結以降の左翼運動の本質は、「社会的マイノリティが、自分たちの『被害者性』を一般社会に認めさせ、『被福祉対象者』として政府などからの援助を勝ち取る」というロジックに基づいています。

もちろんゲイリブ活動などもこれの例に漏れず、社会保障等の法制度不備、日常的な差別の視線、同性愛者等へのヘイトクライムなど自分たちの置かれた窮状を全面にアピールし、被差別者、被福祉対象者であることを政府や行政に認めさせる、という方向性は他の左翼運動と同じです。

確かにこの国には同性愛者等への差別や法制度不備があるのは明白な事実で、機会の分配(結果の分配ではなく)が平等に行きわたらないような社会はやはり問題だと思いますし、改善を求めていくのは当然のことでしょう。

ただ一方で、同性愛者の大人たちが必要以上に自分たちの『被害者性』を強調することは、若い世代の同性愛者に悲観的な未来を想像させてしまう一面もあって、行き過ぎた『被福祉対象者』としての立場のアピールも、若い世代から自立心や希望を削いでしまう可能性もあるのでは?という懸念も一理あるのではないでしょうか。

それに、『被害者性』をアピールする方法自体も、「他にもっと困ってる人がいるじゃん」などと言われ、就職ができずに困っている身体障がい者の方や、ご両親を亡くされて困窮している子どもたちの話などを引き合いに出されてしまったら言い返す言葉がなくなってしまいます。

もし仮に必要以上に『被害者性』を強調して何かしらの援助や成果を得られたところで、次もそういった成果を得ようとしたら、また何かしらの『被害者』を演じなくてはなりません。

何かの被害者で居続ける人生って、果たして幸せな人生でしょうか。

それが幸せと感じる人もいるかもしれませんが、僕はそういった人生はあまり送りたいとは思いません。これは、最近盛り上がっている反原発デモなんかにも同じことが言えるのではないでしょうか。


■反原発デモとゲイリブ運動の共通点

ここで一応明言しておきますが、僕は個人的には原子力発電所への依存度を段階的に弱め、再生可能エネルギーへの研究投資を集中的に行い、いずれは原発をなくすことが最終的に一番合理的な世の中なのではないか、という考えを持っています。


しかし、いわゆるプロ市民系の団体と結びついた反原発デモには参加しようと思う気も、注目しようという気すらも起きませんでした。

「放射能が怖いから政府はなんとかしろ!」「福島の人がかわいそうだから政府はなんとかしろ!」と、実際に土地を奪われた方々がそう叫ぶならならまだしも、原子力政策などにそこまで関心のなさそうな方たちまで、出所不明の情報だけを信じ込み、なぜか自分が日本政府や社会から弾圧を受ける被害者であるかのような顔であちこちのデモを行き来する姿などには少し違和感を覚えていました。(社会的なトピックスに関心を持つ人が増えること自体は素晴らしいことではあるのですが…)

一般的に、『被害者』を名乗る人に世の中は優しいです。 かわいそう、と言って、誰かが親切にしてくれることもあるかもしれませんが、あまりそういうものを乞う姿を、特に若い世代の子たちに見せたくない、見せるべきではないと、僕個人的にはそう思っています。


そんな中、11月に小泉元首相がドイツとフィンランドのエネルギー政策の視察から帰国後に開いた記者会見は、とても印象的で、また、とても自分が求めていたものでした。

会見時間のほとんどは、クリーンエネルギーの技術開発が生み出す莫大な経済効果の話や、現在の日本で研究開発されているプラント施設やエネルギー分野の技術は既にかなりの水準のもので、これらの先端技術を代替エネルギーの開発に転用すれば、この分野で世界をリードできる潜在力が日本にはあるという内容でした。
(お粗末な言い方で恐縮ですが、要は「脱原発は儲かる」ということを言いたいらしい)

記者会見の最後に小泉元首相は「必要は発明の母。長い歴史の中で、日本人はいつもピンチをチャンスに変えてきたじゃないですか。ここで脱原発に方針を転換できれば、日本経済は潤いを取り戻し、日本人の持つ技術力が、再び世界中の人々から尊敬される日が必ず来ると、私は確信しています。」と力強く述べて、会見を終えていました。

それまで聞いたいかなる脱原発活動家の演説よりも説得力があり、本当に実現するのではないか?という気持ちになりました。在任中の小泉元首相はあまり好きではありませんでしたが、なぜ当時小泉さんがあれだけの熱狂的支持を得たのかが、とても理解できました。

それは、「放射能は怖いからやめてください!」という消費者的、被害者的な視点からの脱原発論ではなく、脱原発は国益になる。とくに日本経済の活性化という観点で見たとき、現状の原発建設技術の輸出なんかよりもより多くの人に経済的恩恵が行きわたるのが脱原発政策だ、という切り口だったことが、小泉さんの脱原発論に注目と支持が集まった一番のポイントだったのではないでしょうか。

自分はもう若い世代と言えるのかも怪しい感じですが(笑)、一応社会人生活の先がまだ長い働き盛りの20代としては、同じ脱原発論でも、科学的根拠が不明瞭な情報を振りかざして、将来の不安を煽り「このままでは病気にかかる。」「あなたの命が危ない。」「生まれてくる子どもたちがどうなっても良いのか!無責任だ!」と叫んでいる主張よりも、小泉元首相のような切り口の方が元気が良く、「将来は今よりも豊かな生活が送れるかもしれない」と、未来により明るい希望が持てる感じがして、個人的にはそういう方がより多くの人の支持が得られるのではないかと思いました。

ゲイリブ業界にもこれは同じことが言えて、今特に不自由なく楽しく暮らしている学生や若いゲイのところへ行って、「今は楽しいかもしれないけど、あなたはゲイである以上、このまま何もしないと無縁社会が待っていて、孤独死を向かえる未来が待っている。社会人としてキャリアを積んでいけば結婚圧力が高まって行って…」と悲観的な将来像を提示し、「同性愛者は社会的被害者なんだ」という刷り込みを行ってゲイリブ活動への『リクルート』を行うという手法は、やはり支持は得られなくなってきているのではないでしょうか。
(20年くらい前なら、今よりも保守的な社会で、実際同性愛者であることが社会的被害者という側面が今より強かったことが予測されますし、そういう時代であれば、上記のような言説も一定の説得力は持っていたのかもしれません)

無縁社会は今やゲイだけの問題ではなく、現代人に広く蔓延した不安要素の1つであるし、従って孤独死のリスクなんて誰にだってあります。社会に出れば嫌なことだってあります。飲み会の席で「結婚しないの?」と毎回聞いて来るおじさん社員なんてどこの会社にもいるし、かと言って結婚して家庭を持っている人だって僕にはわからないいろんな苦労をしていると思います。

少なくともこの日本に、「ゲイであるが故に」起きうる不利益というのは、ないとは言いませんがそこまで多いわけでもなく、一見ゲイ特有の不利益に見えることであっても、実は日本の若者一般に起きえる不利益そのものだったりすることが多いと思います。

日本のゲイリブ活動は、長年欧米の白人社会で形成されたゲイリブ言説をそのまま引用する傾向がありました。
欧米のキリスト教社会では、ゲイであるという理由だけで突然殴りかかられたり、最悪の場合殺されたりしてしまう暗い歴史がありました。同性愛者に対して、ここ半世紀前まで『迫害』や『弾圧』が公然と存在していたのです。

そうした過酷な社会を生きる当時の現地のゲイコミュニティは、自分たちの身の安全と自由な生活を獲得するためにゲイリブ活動を始め、多くの成功事例や権利を獲得してきました。しかし日本のゲイリブは、そこで獲得されたゲイリブ言説を、まったく社会的背景や宗教的価値観の違うこの日本社会にそのまま引用しようとする傾向があり、それゆえ、社会事情に自分たちの主張を合わせるのではなく、欧米生まれの言説の持つ構造に無理やり当事者を当てはめようとし、そのために日本のゲイリブ活動は『行き過ぎた被害者意識』を当事者に植え付けてしまう傾向があるのでは、と考えています。

なので、日常的に身の危険のリスクなどが特になく、普通の日常生活が送れている同性愛者の若者に対してまで、必要以上に悲観的な未来像を提示する必要があるのかもしれません。


■人は誰にでも、幸福を追求する権利がある

少し話はそれますが、日本の日本国憲法、アメリカの合衆国憲法をはじめ、世界中の先進国の憲法には「幸福追求の権利」に関する条項があります。この日本だって、公共の福祉を害さない限りにおいては、生まれ持った属性や出自に関係なくすべての国民に幸福を追求する権利をはっきりと認めています。

従って、同性愛者に生まれたからと言って、自分を不遇な被害者に貶める必要はまったくありません。若い同性愛者の方たちに、まだ起きてもいない、将来起きるかどうかもわからない不安を煽る情報を流すのではなく、仕事やプライベートを存分に楽しむ活き活きした大人のゲイの姿や、家族持ちのノンケの多くは、歳とともに失ってしまうチャレンジ精神や洗練された感性をいくつになっても持ち続けていられるゲイの大人の後ろ姿を若い世代に示して行くことの方が、彼らの将来にはより良い影響を与えるのではないかと考えています。

小泉さんではないけど、僕たちはもう被福祉対象者としてではなく、次の日本経済の担い手としての立場をアピールする段階が来ているのではないでしょうか。


家電や自動車など、重厚長大産業が日本製品一人勝ちだった時代はもう昔の話で、新興国も確実に技術力を上げて、現在では価格競争で日本製品は劣勢に立たされています。
しかし一方でここ最近、重厚長大産業の劣勢と反比例するかのように、日本発のアニメや映画、ファッション、美容、デザインなどのカルチャー分野においては、世界的に日本発信の文化が注目を集め、次世代の日本の主要産業の1つになるであろうと期待されています。

こうしたカルチャー産業は、まさにゲイが得意とする分野で、特に美容やファッション、デザイン関連分野で活躍する人の中には、すでにゲイをオープンにしつつも輝かしい功績を残しておられる方も多くいらっしゃいます。前出のように、いつまでも若々しく自由な発想が可能な環境に置かれたゲイだからこそ、普通のおじさんたちとは違った感性を持っていて、より有利な状況で力を発揮できているのかもしれません。



半世紀以上前のアメリカのジョン・F・ケネディ大統領の言葉に

「国家があなた達のために何が出来るかを問うのではなく、あなたが国家のために何が出来るかを問うて欲しい。」

という有名な一説がありました。

国家や社会からあれをしてもらおう、これをしてもらおうという考えのままでいると、自ずとずっと「かわいそうな被害者」に安住せざるをえません。大事なのは、この社会をどうやって盛り上げて、活気づけていけるか。だと思います。まだ起きていない不幸なシナリオに気を取られるよりも、今ある幸福感を最大化して行きたい。



同性愛者に生まれたからと言って、不幸になる必要もなければ、幸福を追及することを諦める必要なんてありません。
間違ったこと、不便なことは正して行く必要はあるけど、それとずっと被害者でいることとは違うと思います。

まだまだ先は長い。次世代の方々をエンカレッジできるような後ろ姿を示していけるよう、がんばっていきたいものです。


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